私がマンキンを知って間もなく作った作品です。 そのため、実際のマンキンの内容、シャーマン、ハオ様とは かなりかけ離れてしまってます。 ほとんど、私の想像、空想化になってしまい、かなりオリジナル化してます …つうか、全くかも! ハオ様を意識しないで読んでくだされば幸いです。 未来王の孤独 T 〜彼〜 グレートスピリッツ… それは500年に一度現れる地球上の全ての魂の集合体…。 このグレートスピリッツを手にしたものはこの世の救世主、すなわち神となり、全地球上の全てを自由に操る事が出来る。 私は導かれるように、そのまばゆい光に吸い込まれそうになっていた。 …しかし、誰かが背後から腰を抱き、進もうとしている私を必死で止めている。 私は一歩も足を踏み出す事が出来ない…。 お腹が苦しい…回されてる腕の力で、お腹からだんだん胸まで苦しくなって来た。 『う…息ができない…』 私はお腹にかかるその力、その重さで目が覚めた。 夢だった… お腹に掛かっていた圧力は横にいる彼の腕が乗っていたのだ。 目を開けた途端、飛び込んできたのは古い傷が残る腕。 その腕は私の枕となり視界に見える手の平は力なく握られてる… 夢を掴もうとしている、全てを掴もうとしている。 だが私には見えた…そこに握られているもの 『愛』 しかし、力ないが為にその『愛』は今にも落ちそうになっている…。 隣でまだ寝息をかすかにたてている彼を見た。 彼の長い髪の毛が私の肩に絡まっている。 外の陽が薄暗い部屋に微かにパープルな光を入れて、彼のまつげに反射している。 私はそのまつげの根本にそっと唇をよせた。 彼の瞼が数回かすかに動き、彼は静かに目を開けた。 そして小さく微笑み、まぶしそうに私を見つめてる…。 私を見つめる、その瞳に映っているものは、深い闇。 彼自身気が付いていない悲しいくらいの孤独。 強くいようとするもろい心。 三年前… 「仲間になろう…」 彼は街を毎夜、路上で人々の悩みを聞きながら、居場所もなく生活していた私に声を掛けてきた。 「僕は大いなる力を持っている、僕とこの世界を変えてみる気はないかい?」 孤独だった私は彼に付いて行く事にした。 彼がどこから来たのか、何をしようとしてるのか… 私には関係なかった。 見たくなくても人の心の闇が見えてしまう能力を持つ私。 そして、私と同じような能力を持つ彼が声を掛けてきた。 その時、私はそれだけで運命を直感したのである。 自分の能力の大きさゆえ苦しむ… ある意味、私達シャーマンは苦しさから自分を守る為に生きているようなもの。 1000年前の平安時代、に陰陽師として活躍していた彼はその巨大な力を恐れられ、抹殺された。 だが、すでに持ち合わせていた転生を操る術をもって、グレートスビリッツを手に入れる為に彼は現代に蘇ったのである。 三年前、まだあどけない笑顔で声を掛けて来た彼が妙に大人っぽく感じるようになったのは、つい最近になってからだった。 旅の途中で彼を狙う世界各地のシャーマン相手に戦う姿が勇ましくもある。 冷酷無残に容赦なく人を殺す彼…。 彼にはひとかけらの情けもなく、自分の欲望の邪魔をするものは消すだけであった。 『仲間になろう』などとはよく言ったものだ。 その威力を目の当たりにして、最近になって私は疑問を持ち始めていた。 彼は周りに自分の強さを認めてもらう… ただそれだけではないのかと… 同時に彼が少年から大人になっていくサマも傍で見て来た。 異性の私は何も意識することなく、旅を共にするのは苦しくなり始めていたのだ。 そんなある日の深夜だった… 目を覚ました私は直ぐ寝付く事が出来ないでいた。 テントの小窓から何気に外に目をやると、少し先にある岩に座る人影があるのに気付いた。 そしてその人影が彼であるという事はすぐ分かった。 私は迷うことなく、テントの外に出て、彼に近づいていった。 私の気配に気が付いた彼はこっちを見た。 「あ…君か…」 「眠れないんですか?ハオ様…」 そう言いながら、私は彼の隣に腰を降ろした。 「ん…」 「何かお考えでも?」 「…」 彼は空を見てる。 「今夜は星が綺麗…」 「そうだね…空の星は手を延ばせばすぐ届きそうなのに、僕が何度も転生繰り返しても届かない…」 「いくら強い力をお持ちのハオ様でも、無理?…ですか…」 「ふ…この地球を手にしようとして、1000年かかってるんだよ、無理に決まってるじゃないか…」 そう言いながら、彼は笑った。 私も一緒に笑った。 「ハオ様、身体が冷えます、おやすみになった方がいいかと…」 「…」 彼は何も言わず、しばらく空を見てる。 どのくらいの時が流れただろう…。 それは、満天の星空に流れ星が走った瞬間だった。 「愛してくれないか…僕を」 突然の言葉に横を見ると、 星空を見上げる彼の目には、月の光を反射するものがあった。 一瞬の空白の時間… 私はその言葉に彼の横顔をただ見るだけしか出来ない。 私は返事を探してた… 空を見上げながら彼は静かに話始めた。 「分かるんだ…君は僕から離れようとしてる…」 彼にはすでに今の私の迷いが分かっていた。 「皆、僕に恐れをなして離れて行く…1000年前もそうだった、最初は僕のこの能力に魅力を感じ、助けを求めてついてくるのに、僕の力を見たら…去って行く…僕がキングになる事がそんなにいけないのだろうか…、シャーマンだけの楽園が…」 「ハオ様…私は…」 「そう、君も他の仲間と一緒だ、別に頼んでもいないのに、僕に『様』を付ける…何故なんだ、僕はシャーマンだけど人間、普通の人間なのに…」 その言葉に私はただうつむくだけであった。 彼は星空を見上げたまま続けた… 「それで、君もそうなんだね?僕についてくるのに迷い始めてる…でも…ただ…ただ、もうひとつ、君は何か違う感情を僕に持っていないかい?」 そう言いながらこっちを見た。 「え…っ」 私は言葉を詰まらせた。 「分からないんだ、そのもうひとつの君の心が、いったい何なのか…」 私は言葉を探したが、多少の焦りもあり、何も答えられずにいた。 「特別なことは何もない、愛して欲しい…それだけ…知りたいんだ、人を愛することって…どういうことなのか…」 そう言いながら彼はまた空を見上げた。 胸が熱くなる… 唇が震える… 涙が溢れてくる… 自分の感情という見えない所から、沸々と湧いてくる想いに私はこの時始めて気が付いた。 彼の言葉に対しての、私の頭の中に駆け巡る私の言葉、そして答え… でも、それを口から発する事が出来ないでいた。 私は今ある全ての想いを込めて彼の手の甲に自分の手を置いた。 「ん…?」 彼は私を見た。 その瞳に映る月の反射がやけに眩しく透き通ってる。 1000年前、汚れた暗黒世界を見てきた瞳ではなく、まだ何も知らない生まれたばかりの赤子のように透明… 私はいつの間にかその瞳がある瞼に触れていた。 彼は黙ったまま私を見てる… そして、そのまま指を滑らせ、彼の唇に触れる。 彼はまだじっと私を見ている。 刹那との葛藤に負けた私は、彼の唇に自分の唇をそっと寄せた… それは…かすかに触れるほどの短いキス。 彼は私のその行為をだまって受け入れてくれた。 そして、私は静かに彼の身体を抱き寄せた。 彼は私の胸にもたれかかり、しばらく何かを考えてるかのようでもあった。 『…ハオ…様…』 心の中で彼の名を呼ぶ… 私は彼の髪を何度も何度も撫でては指に絡める …愛しくて…ただ、愛しくて 切なくなる気持ちを押さえていた。 「柔らかいんだね…」 「え…?」 「君の唇」 「…」 「そして、聞こえる…狂いのない一定のリズムを取る君の心臓の音」 私は彼の髪を撫でる事を止めなかった。 「生きてる…確かに…君も、僕も、この鼓動のひとつひとつ…時を刻んでる」 彼が小さな声でつぶやいた。 彼への愛しさの波が、私の鼓動を伝わり、彼に届いているだろう… 「ハオ様…」 「ん?なに?」 「もう一度…キスしていい?」 それは、ごく自然に出てきた言葉だった。 彼は身体を起こし、私の顔を覗き込んだ。 そして、静かに私の頬に手を当て、そのまま私を引き寄せた。 私からではなく、今度は彼が私に唇を寄せてきた。 彼の唇の感触が、さっきと違い、全身に熱い閃光を走らせた。 閃光渦巻く頭の中で 『これから…どうなるのだろう…』 彼の唇をまさぐりながら、私は自分に問い掛けていた。 いくらシャーマンとて、先を見透す事までは無理なことだった。 ただ、今ここにいる二人が、私と彼である事に違いはないのだ。 孤独であるが故、弱いが故に常に強くなくてはならない。 そして、そのまま生きて行かねばならない現実。 その現実に敗北は許されない彼が、人間としての心を取り戻そうと、もがいてる。 私はこの現実がどうなるか計り得ないが、彼の苦しみを受け入れる事を決めた。 それから、私達はその後も何度か接吻を交わした。 ただ、あまり長い事、外にいたら、他の仲間に気付かれるというこどで、しばらくして間もなく、それぞれのテントに戻り眠りについた。 今… 完全に目覚めた彼が、また私の身体をまさぐり、私を求め始めてる… 夕べから、3度目… けだるい身体にまた、熱いものが戻ってくる…。 腰まである彼の髪の毛がゆるやかに流れながら、彼の身体に絡み付いている。 その髪の毛の隙間から見える彼の素肌は、淡い紫色に溶けて、造型美のように綺麗だ。 私はその、しなやかな喉元にキスをする。 「温かいよ、君の身体…伝わってくる、心も…温かい…」 そう言うと、私の胸に顔をうずめた。 『あなたも充分にあたたかい…ハオ様』 彼の背中を抱きながら、私は心の中でつぶやいた。 肌を合わせる事が愛なのか、それは分からない、答えなど出ない。 しかし、それを探すかのように、彼は私の身体をさ迷い、むさぼる… 愛おしく思う気持ちが強くなると、相手を抱き締めたくなる… 男女に限らず、人間に限らず、それは自然の感情。 そして、自分の手に抱く事によって、さらに生まれる感情… 『欲』 男と女はさらにそこから交わり、身体を一体化する事で、自己満足しようとする。 彼の欲は愛おしさからなのか… はかなくとも、そうあって欲しいと、私は彼の激しい愛撫を受けていた。 そして、今この瞬間、分かる事… 彼は生身の男である事… そこには、1000年前からキングを目指す為に蘇った偉大な力を持ったシャーマンの姿はなかった。 彼は今この時、性欲に侵され交わり果てようと必死になっている、ただの男でしかなかった… 2004・7(2002・10作) haori 戻る |