ドラゴンクエストX
〜天空の花嫁〜
『君と…』
第一章 旅人の恋
幼き日の思い出
| 世界的な大富豪ルドマンの所有する船”ストレンジャー号” 大海原をビスタの港に向け、航海していた。 この船の中で、この物語の主人公は見ていた夢に驚き飛び起きた。 「ん?どうした」 父のパパスが気付き、声を掛ける 「うん…夢を見たんだ、とても不思議な夢…」 「はて?それはどんな夢なんだ?」 幼いは一度、思い出すように俯くと、再びパパスを見上げる 「何処かのお城で赤ちゃんが生まれて…そのお母さんがとても優しそうなんだけど、さらわれちゃうんだ…赤ちゃんは泣いていた…」 その話にパパスは少し驚いた表情になる、しかし、はそれには気が付く事無く更に続ける。 「温かいんだよ…お父さん!でもね!そのお母さんの腕の中、とても温かかったんだよ…赤ちゃんが…そう感じていたんだ、僕にそう言ってるんだ…」 少し声を大きくしたはパパスにそう話した。 「そうか、…それは不思議な夢だ、しかし、心配する事はないぞ、その温かいお母さんの腕はきっと、お前の母さんの温もりなのかも知れんな…」 パパスはそう言うと幼いの頭を大きな手ですっぽりと包み込んで撫でた。 「さぁ、、そろそろ、ビスタの港につく頃だ、起きて、船で御世話になった人に挨拶をしてくるんだ」 父の大きな手に抱きかかえれると、は足をバタバタと嬉しそうに笑う。 「うん!そうする!」 ビスタの港に付くと、先に割腹のいい紳士、その手にしっかり捕まっていると同じくらいの女の子が乗ってきた。 「やぁ、ルドマンさん、この度は船をお借りして、有難うございます。お陰で、また、サンタローズの村に無事帰る事が出来そうです。」 「おう、これはパパスさん、いえいえ、このような船でよければ、いつでも使ってください、それにしても、今回は2年振りにサンタローズに戻られるとか、長旅だったようで、ご苦労さんですな、はっはっ…」 パパスの話から、前にいる大きな紳士がこの船の持ち主ルドマンであることが、幼いにも直ぐに分った。 「おや?そちらのお嬢さんは?」 パパスがルドマンの手に引かれて、はにかんでる女の子を見る。 「一人娘のフローラですよ、これから、修道院に送るところでして」 は同じ視線の高さで、フローラを見る。 視線が重なり、一瞬ブルーの瞳がキラッと光ると、フローラは恥ずかしいのか、紳士の後ろに隠れてしまった。 そんなフローラの仕草に何故かも恥ずかしくなる。 父親達が話す中、パパスの手を掴んだまま、は空を見上げた。 眩しい日差しが、瞼の上を直撃する。 見上げる空は、これからのの長い旅を予測出来ないほど、それは深く何処までも続く青さであった。 初めてフローラと会ったあのビスタの港での事など、はとっくに忘れていた。 あれから、何年の月日が流れているのだろう… 大きなパパスの手に引かれ、あのビスタの港に付いた頃のはまだ6歳であった。 その後、父パパスはゲマという獲たいの知れぬ魔物に殺されて、はラインハット城の後に王位継承を継ぐ筈のヘンリー王子と共に、何処か分らぬ場所で10年の奴隷生活を送っていたのである。 そこをヘンリー、マリアと共に抜け出したは、海辺の修道院で、なんとか保護され、また新たに旅立ちを始め、今に至る。 ラインハットにやっと戻る事が出来たヘンリーは、その数年後に結婚したという噂をルラフェンという町で耳にした。 「ヘンリーさんが、結婚ですか…さんは、まだ先ですね」 旅の途中、仲間になってくれたモンスター、スライムナイトの ピエールがに話掛ける。 「結婚か…考えてもいないな…」 はそう言うと、遥か地平線を見た。 突然居なくなった母マーサ、その母を捜し続けていた父パパスの事がの心の中に深く刻み込まれている。 父の意思を注いで、マーサを探し出し、父を死に至らしめた、ゲマという奴の存在を突き止める、そして、暗黒世界の扉を開けようとしている、ゲマのまだ上に君臨しているだろいうミルドラ−スを倒す事。 今、自分がやるべき事は余りにも大きい、結婚なんて考える余裕もない。 まして、結婚すると、続けているこの旅はどうなるのだろう… 目の前に着実に圧し掛かってくる、この大きな課題をクリアしないことには、結婚は出来る筈もない… そう思った時、フッと懐かしい人物の顔がの脳裏に浮んだ。 --- ビアンカ そういえば、どうしているのだろうか… 「どうなさったんですか?さん」 足を止めたにピエールは尋ねてきた。 「いや、幼馴染のビアンカの事を思い出したんだ、どうしてるかな…」 「ビアンカ…さんですか?」 「幼い頃、近くの幽霊が出るというお城…なんて言ったっけ…レ…レヌール…うん!レヌ−ル城にお化け退治に行ったんだ」 「ほう…そのビアンカさんとですか?」 「うん、毎日夜中に叩き起こされて、半ば強引に連れて行かれてさ。でも、退治してきた事で、ベビーパンサーのチロルをいじめっ子から助けてあげる事が出来た」 は思い出しながら、懐かしそうにピエールに話した。 「へぇ〜、ベビーパンサーをいじめっ子から助ける為に、毎夜お化け退治ですか…」 ピエールは笑いながら、聞いてきた。 「あぁ、ビアンカはおてんばで、僕はよく振り回されていたけど、本当はとても心が優しいんだなって、分ったよ。ま、今になってからなんだけどね…はは…」 懐かしそうに話すの目がとても輝いていた。 「さん、行きましょう!ビアンカさんの所に、行ってみましょう!」 突然ピエールが言い出した。 「えっ?ビアンカの所に…?って…」 「ご存知なんでしょ?何処に住んでるか」 「うん、確かサンタローズの隣の、アルパカ村だと思ったけど…」 若干戸惑いながら、は答えた。 「じゃ、丁度いいじゃないですか!サンタローズにも行けるじゃないですか」 「あぁ…そうだね」 ビアンカなら… もし、ビアンカが自分のお嫁さんになってくれるのなら… の事や父パパスの事をよく知っている。 自分が旅をしている理由、自分に課せられたこの運命を理解してくれるだろう… ビアンカが自分のお嫁さんいなってくれたら、自分のこの旅にきっと、着いてきてくれる。 はアルパカに向う馬車を引きながら、考えていた。 しかし、それはあくまでも、自分の考えであり、当のビアンカの気持ちなどは分からない。 しかも、あれから長い年月が経っている、ビアンカにいい男(ひと)が現れていて、もしかしたら、ビアンカこそが結婚していることだってありえるのだ。 は一度思考を戻すと、フ…っと苦笑した。 数日後、アルパカに着いた。 懐かしい、村の雰囲気はそのままである。 大きく息を吸い込むと、村の奥にある、ビアンカの父ダンカンが経営していた宿を目指す。 途中、サンタローズの村に魔物が襲来したという話を村人から聞いた。 本当なのだろうか…兎に角、ビアンカに会って、その事も聞こうと思った。 少し、鼓動が早くなっている、はドアの中に居るだろう、あのはつらつとしたビアンカの十数年振りに見る大人の顔を想像した。 しかし、浮んでくる顔は幼いやんちゃ娘の大きな瞳と、くしゃっとした、憎めない笑顔である。 鼓動の高鳴りを抑えるように、今一度、大きく息をして、宿屋のドアを開けた。 「いらっしゃい!」 カウンターには、覚えのない婦人が立っていた。 はカウンターに近づくと、一通り、中を見渡した。 「お早いお着きですね?お泊まりですか?」 「…あ…はい…あのォ…」 宿屋の中の雰囲気が全く違う、造りは同じだが、壁に掛けてある絵、ロビーに置かれているテーブルやイス、ジュ−タンの色もダンカンさんが経営していた頃と違った。 十数年も経っている、模様替えは当たり前の事なのだが、何かが違っていた。 「どうしましたか?旅のお方」 女将に声を掛けられ、ハ…っと我に戻る 「お尋ねしますが、ダンカンさんは…?以前ここの…」 その言葉に女将はあぁ…と頷いた 「ええ…私達夫婦は数年前に此処をダンカンさんから譲り受けたんですよ、ダンカンさん親子は何処かの山奥にある村に行かれたという話を聞いていますけど」 愕然とした。 長い年月が物語るような話であった。 「そうですか…」 「で、旅の方?お泊まりになられるんですか?」 女将はを見て、苦笑しながら、尋ねてきた。 「ぁ…はい、お願いします」 気を取り戻していないは慌てて返事を返した。 時の流れが物語る、全ては神が決めてる運命なのか… はベッドの中で、幼かった自分とビアンカを思い出していた。 「!起きてっ!」 「うぅ…ん」 「もう!、お化け退治にいくんでしょう?」 「…う〜〜、眠たいよ…」 「もう、根性無しね、それでも、戦士の息子?」 「は…はい…起きます…ふぁ〜〜」 毎夜ビアンカに起こされてた事。 レヌ−ル城で、ビアンカが突然消えてしまって、慌てて探し出した時。 「もう、遅いよ、助けてくれないのかと思った」 強がりながらも、半べそをかいていた。 記憶をたどると、懐かしい思いと募る思いも蘇る ーーーしかし きっと、何処かで、幸せに暮らしているのだろう… そう、考えると、今自分が表れて、その幸せを乱す事になってしまう可能性もありえる。 はビアンカとの事を、思い出として、心の奥深く閉じ込める事を決めた。 そう…幼い頃の思い出として。 |
幼き日の思い出 終
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